【両親の対立状況での子供の心理(親への迎合・忠誠葛藤や敵意の発生)】
1 両親の対立状況での子供の心理
2 学童期前半(6〜9歳程度)
3 学童期後半(10〜12歳程度)
4 思春期(12〜14歳程度)
5 アイデンティティ確立期(15歳以上)
6 子供の気持ちの調査における工夫(概要)
1 両親の対立状況での子供の心理
夫婦が離婚に向けた協議や裁判所の手続を進めている時や,離婚成立後に,財産や子供をめぐって対立が生じることがよくあります。
詳しくはこちら|別居後の子供の奪い合い(誘拐罪の成立・子を引き取る・子と面会する手続)
子供に関する手続の中で,子供の気持ちの調査が行われることがあります。
詳しくはこちら|監護に関する事項・親権者の裁判(審判・附帯処分等)における子の意見の聴取
ところで,両親が対立している状況では,子供の気持ちは通常の時とは違ってとても複雑になります。子供の気持ちの把握は簡単ではないのです。
本記事では,両親が対立している状況で子供の気持ち(心理)にどのような変化が生じているのか,ということを,子供の年齢で分類しつつ説明します。
2 学童期前半(6〜9歳程度)
子供が6〜9歳程度である場合,両親のトラブルを自分自身の問題と一緒にする傾向が強いです。
そこで自責の気持ちが生じたり,親に忠誠であるべきと思うようなことがよくあります。
<学童期前半(6〜9歳程度)>
あ 問題の切り分け不全
父母の問題を子自身の問題と分けて考えることが難しい
い 忠誠葛藤
父母の不和を自分のせいだという自責感情や父母の両方を裏切れないという忠誠葛藤を抱く
そうした気持ちを内に溜め込みやすい
う 和合ファンタジー
自分が良い子に振る舞えば,父母が親密な関係に戻るのではないかという,和合ファンタジー(和解幻想)を抱いていることもある
※金子修ほか編著『講座 実務家事事件手続法(上)』日本加除出版2017年p419
3 学童期後半(10〜12歳程度)
小学生高学年(10〜12歳)程度になると,それ以前と同様に忠誠葛藤も生じますが,さらに一緒にいない親に対する敵意が生じる傾向があります。純粋に嫌悪するというわけではなく,単に一緒にいる親に迎合するという気持ちによって敵意が引き起こされている状態なのです。
<学童期後半(10〜12歳程度)>
あ 忠誠葛藤
忠誠葛藤を起こすことがある
い 敵意発生
一方の親と強く結びつき,他方の親がすべて悪いと考えて,他方の親に対して敵意を示すことがある
※金子修ほか編著『講座 実務家事事件手続法(上)』日本加除出版2017年p420
4 思春期(12〜14歳程度)
中学生くらいになると,ある程度理解力が高くなっています。とは言っても,大人ほどの理解力には達していません。
そこで,その時によって言うことややることがブレるという状況が生じやすいです。
<思春期(12〜14歳程度)>
あ 思考力の発展途上
理論的な思考が徐々に可能となりつつある
しかし試行錯誤の面もある
い 言動の不安定性
言動が一貫しないことが多い
※金子修ほか編著『講座 実務家事事件手続法(上)』日本加除出版2017年p420
5 アイデンティティ確立期(15歳以上)
15歳程度になると,気持ちとしては父母からの自立に達します。一時的な状況に影響を受けることなく,自分自身の考えを表明できるようになります。
<アイデンティティ確立期(15歳以上)>
父母から自立し,親とは別個のアイデンティティが確立していることが多い
※金子修ほか編著『講座 実務家事事件手続法(上)』日本加除出版2017年p420
6 子供の気持ちの調査における工夫(概要)
裁判所の手続の中で子供の気持ちを調査する方法にはいくつかのものがあります。調査方法の中で代表的なものは家庭裁判所調査官による調査です。調査官は,専門的な知識や経験を活かして,以上のような複雑な子供の心境を踏まえて子供の真意を把握するように工夫しています。
詳しくはこちら|家裁調査官による子供の意見の調査(真意を把握する工夫や心理テスト)
本記事では,両親が対立している状況にある子供の心境について説明しました。
このような基礎的なメカニズムを主張や立証に活かすことで,結論が違ってくることもあります。
実際に子供が関係する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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