【有責配偶者からの離婚請求における子の年齢の影響(裁判例の傾向分析)】

1 有責配偶者からの離婚請求における子の年齢の影響(裁判例の傾向分析)

夫婦の一方が不貞行為などをして、破綻の原因を作ったケースでは、この者(有責配偶者)から離婚を求めても、原則として否定されますが、例外的に認められることも多いです。この例外となる事情については、判例が3つの要件(要素)を明確に定めています。
詳しくはこちら|有責配偶者からの離婚請求を認める判断基準(3つの要件)
有責配偶者からの離婚請求を認めるかどうかの判断要素の1つとして、未成熟子の存在があります。
詳しくはこちら|有責配偶者の離婚請求の3要件のうち未成熟子の不存在の要件の判断
本記事では、子どもの年齢や人数がどのように判断に影響するか、ということについて、実例(裁判例)をもとに説明します。

2 離婚請求が認められた裁判例

(1)最高裁昭和62年9月2日判決(判断基準を立てた)

36年に及ぶ別居の末、74歳の夫からの離婚請求が認容されました。最高裁は、「長期間の別居」「未成熟子の不存在」「相手方が極めて苛酷な状態に置かれる事情の不存在」の3要件を提示し、それらを満たす場合には有責配偶者であっても離婚を認め得ると判示しました。

(2)最高裁平成6年2月8日判決

別居14年の夫婦の事案で、末子が高校2年生という未成熟子であったにもかかわらず、父による養育実績と経済的支援の充実が評価され、離婚請求が認められました。最高裁は「未成熟子がいることのみで離婚を否定すべきではない」と明示しました。

(3)福岡高裁那覇支部平成15年7月31日判決

夫が不貞の後に2人の未成熟子を養育していた事案です。裁判所は、離婚紛争の長期化が子の福祉に悪影響を与えると判断し、父子の関係の安定性を重視して離婚を容認しました。

(4)大阪高裁平成19年5月15日判決

15年の別居後、2人の高校生の子を持つ夫の請求が認容されました。養育費や学費支払いの誠意、家庭裁判所の心理調査結果から子どもの福祉への影響が小さいことなどを踏まえ、未成熟子の存在が障害にならないとされました。

(5)東京高裁平成26年6月12日判決

妻が有責配偶者であるものの、夫側にも責任がある複合的破綻事案でした。妻の監護能力と父親の収入状況を考慮し、幼児(6歳と4歳)の福祉が損なわれるとは認められず、離婚が認容されました。

3 離婚請求が認められなかった裁判例

(1)最高裁昭和27年2月19日判決(参考)

通称「踏んだり蹴ったり判決」として知られ、有責配偶者からの離婚請求を厳しく退けた判例です。この判決以降、有責配偶者による離婚請求は長らく否定される傾向にありました。この後、昭和62年最判(前記)が、例外的に離婚を認める基準を立てることになったのです。

(2)東京高裁平成19年2月27日判決

成人したものの四肢麻痺という重度障害を持つ長男がいた事案で、「実質的に未成熟子」と認定され、離婚による福祉侵害と社会正義に反することを理由に夫の請求は棄却されました。

(3)東京高裁平成20年5月14日判決

長期別居と成人子の存在があっても、妻が抑うつ症を抱え、障害のある子の支援を担う中で離婚すれば生活困窮に陥ると判断され、夫からの離婚請求は否定されました。

4 未成熟子の位置づけ

有責配偶者による離婚請求における「未成熟子の不存在」の判定は、子どもが何歳であれば、何人までであれば離婚が認められる、というように単純な公式があるわけではありません。子の実質的な自立状況、監護状況、養育環境などを含めた柔軟な判断がなされます。たとえば、年齢は重要ですが、成人していても障害により経済的自立が困難な場合は「実質的未成熟子」として扱われることもあります。
また、最終的人は「未成熟子の不存在」以外の2要件(要素)も含めた総合判断となります。たとえば、相手方(離婚を請求された側)が経済的に困難な状況とならないような経済的な給付がある、ということも重要です。

5 本記事の基礎となる理論

詳しくはこちら|有責配偶者からの離婚請求を認める判断基準(3つの要件)
詳しくはこちら|有責配偶者の離婚請求の3要件のうち未成熟子の不存在の要件の判断

本記事では、有責配偶者からの離婚請求における子の年齢の影響について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に有責性が関係している離婚に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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