【関係修復を目指す夫婦円満調停が利用できる、離婚方向でも活用できる】
1 夫婦関係の修復に向けた夫婦円満調停もある
2 夫婦円満調停では,不仲の原因と改善策を協議する
3 円満調停を申し立てる前に,相手方に趣旨を説明しておくと良い
4 円満調停では,代理人弁護士が出席しない方が良い
5 離婚の方向性を希望する場合でも円満調停が活用できる場合もある
1 夫婦関係の修復に向けた夫婦円満調停もある
離婚とは逆に,夫婦関係の修復に向けた協議を行う手続きがあります。
円満調停と呼ばれています。
家庭裁判所に申し立てることができます。
家事事件手続法244条におけるその他家庭に関する事件として扱われます。
分類上(家事調停の中の)一般調停とされています。
この調停では,調停委員を介して,夫婦関係修復に向けた話し合いが行われます。
例えば,夫婦間で共同生活のルールを設定することにより,その後,夫婦関係を再開させることに成功する例もあります。
一方,夫婦関係の修復ができないことが明確になり,離婚の話し合いに移行する例もあります。
2 夫婦円満調停では,不仲の原因と改善策を協議する
夫婦円満調停の具体的な協議内容は,次のようなものです。
<夫婦円満調整調停での協議の根本>
・破綻(仲が悪くなったこと)の原因を突き止めること
・この原因を解消する方法を考えること
<修復のためのルール設定例>
・夫と姑の接触頻度を設定する
・家計の支出の項目,限度額を設定する
この調停は,円満な夫婦生活を再開することが最終目標です。
破綻の原因を特定し,この原因を解消する,というプロセスで協議を進めるのが一般的です。
3 円満調停を申し立てる前に,相手方に趣旨を説明しておくと良い
夫婦円満調停は関係を修復することが目的です。
申し立てた直後に,家庭裁判所から相手方に呼出状が送付されます。
一般の方にしてみれば,裁判所の封筒で送付物が届くだけでも驚くのが通常でしょう。
しかも,その封筒の中身が『呼出状』というタイトルです。
仮に事前に知らないでそのような書類が送付されてきた場合,インパクトが強いです。
書面には『夫婦円満調停』という記載が含まれています。
しかし,大げさな手続きを始めた,というようにネガティブな印象を持たれることが多いです。
これから関係を修復する目的があるのですから,このようなネガティブな印象を避けるべきです。
申し立てる前に,相手方に方針と円満調停の趣旨を説明して,了解を取り付けておくと良いです。
<円満調停の申立前に相手方に説明する内容>
円満調停によって,第三者を介しつつも,修復を目指す方向性であること
4 円満調停では,代理人弁護士が出席しない方が良い
夫婦円満調停は,文字どおり,夫婦の仲を修復することが目的です。
弁護士が代理人として活動すると,敵対的なイメージに捉えられてしまうことがあります。
その一方で,解決の方法,方向性については弁護士のアドバイスは有用です。
もちろん,弁護士が夫婦円満調停に関するアドバイスをすることもあります。
離婚の方個性のみではないのです。
夫婦円満調停に関しては,次のような進め方をすることが多いです。
<夫婦円満調停を進める際の弁護士の関与スタイル>
ア 弁護士が法律相談として手続などのアドバイスをするイ 弁護士が書類作成についてのアドバイスをするウ 夫婦円満調停の期日への出席は当事者のみが行う
もちろん,夫婦の関係・状況によっては,例外もあります。
弁護士が代理人として関与した方が修復のために効果的なこともあるのです。
実際に弁護士が円満調停に出席し,調停成立→修復成功,を実現した事例もあります。
いずれにしても,法律相談の段階では,弁護士は水面下,後方支援の状態です。
弁護士がどのような関与をすべきか,ということも含めてアドヴァイスすることになります。
相談をすること自体について心配することはありません。
5 離婚の方向性を希望する場合でも円満調停が活用できる場合もある
例えば,次のような事情がある場合は,円満調停も含めて検討すると良いです。
<「円満調停」を検討する典型例>
ア 夫婦仲が悪くなっていたイ 妻が家を出て行ったウ 夫としては,修復困難なので離婚を希望している
離婚の希望ということから,一般的には離婚を求める方向の交渉,調停や訴訟が適しています。
ただし,状況によっては夫婦円満調停を申し立てる手法もあります。
こちらから円満調停を申し立てることで,『私の方からは修復を希望している』というメッセージが明確化します。
夫婦関係がある程度悪化し,対立ムードが強い場合は,家庭裁判所が介在しても修復したくない,修復できないと考えることが多いです。
そうだとすれば,相手方としては,「修復したくない」という回答をすることになります。
その結果,次のような流れになることが期待できます。
ただし,確実にこのような判断に至るわけではなく,その傾向がある,という意味です。
他の事情によって,最終判断は大きく異なりますのでご注意ください。
<相手方が円満調停を拒否した効果>
あ 効果1
相手方から明確な『同居拒否』,『修復不可』というメッセージを獲得する
↓
裁判所が『だったら離婚したら』と,離婚する方向性を推奨してくれる
↓
早期離婚成立の可能性が高まる
=婚費地獄を抑制,防止することになる
<→別項目;離婚時の清算が大きくなる根本的要因,婚費地獄>
い 効果2
相手方から明確な『同居拒否』,『修復不可』というメッセージを獲得する
↓
「相手方の同居義務違反による破綻」という性格を持たせる
↓
同居義務・貞操義務の解消(という解釈になる可能性アップ)
別の言い方をすると相手方の対応をみる,様子見という趣旨の利用ということです。
実際に,円満調停の協議から始まり,その後,離婚の方向に方針が切り替わることもあります。
<→別項目;円満調整調停→離婚調停への移行>
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