【雇用主が加入する社会保険=健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険】
1 雇用主が加入する社会保険=健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険
2 社会保険加入義務のある事業所|『強制/任意適用事業所』
3 社会保険加入対象となる従業員|労働『時間・日数』で決まっている
4 労災保険は労働に関して従業員が負傷,疾病というになった場合に給付される
5 『業務上災害』は『業務起因性』『業務遂行性』があれば認められる
6 雇用保険の給付対象の整理|求職者・就職促進・教育訓練・雇用継続給付
7 解雇に至った場合,元従業員は失業給付を受けられる
1 雇用主が加入する社会保険=健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険
会社・個人事業主が従業員を雇用すると,一定の社会保険に加入する義務があります。
最初に社会保険の内容をまとめます。
その後に加入義務の対象となる雇用主の範囲を説明します。
<雇用主が加入する社会保険の分類>
社会保険の種類 | 主な支給対象 |
健康保険(医療保険) | 病気・怪我の治療費の支給 |
厚生年金保険 | 国民年金(1階部分)の上乗せ(2階部分)としての支給 |
雇用保険 | 失業した時に支給する |
労災保険(労働者災害補償保険) | 労働中・通勤中の怪我の治療費の支給 |
『雇用保険』と『労災保険』を総称して『労働保険』と呼んでいます。
また,社会保険としては,以上の4つ以外に『介護保険』があります。
ただこれは雇用主が加入するものではないので,ここでは説明から除外します。
2 社会保険加入義務のある事業所|『強制/任意適用事業所』
(1)健康保険・厚生年金保険
健康保険・厚生年金保険については『強制適用事業所』と『任意適用事業所』の2種類に分けられます。
<健康保険・厚生年金保険の加入形態>
強制適用事業所 | 無条件に加入が義務付けられる |
任意適用事業所 | 希望により加入することができる |
任意的適用事務所が加入する場合は,『社会保険事務所長の認可』を受ける必要があります。
次に,『強制/任意』の区別についてまとめます。
<健康保険・厚生年金保険の加入の強制/任意>
雇用主 | 常勤労働者5人以上 | 常勤労働者5人未満 |
法人事業所(人数関係なし) | 強制 | 強制 |
次を除く個人事業主 | 強制 | 任意 |
個人事業主(農業・漁業・一定のサービス業※1) | 任意 | 任意 |
<補足;『任意』となる個人事業のサービス業(上記※1)>
旅館・飲食・理美容業・弁護士事務所・税理士事務所など
(2)労働保険=雇用保険+労災保険
雇用保険・労災保険も『強制適用事業所』と『任意適用事業所』の2種類があります。
<雇用保険・労災保険の加入形態>
雇用主 | 労働者5人以上 | 労働者5人未満 |
法人事業所(人数関係なし) | 強制 | 強制 |
次を除く個人事業主 | 強制 | 強制 |
個人事業主(農業・漁業) | 強制 | 任意 |
農業・漁業以外では,1人でも人を雇用した場合に,加入義務が生じるのです。
ここまでは『事業所』としての加入義務の有無の説明でした。
次に『加入する』(強制or任意+認可)場合だとして,従業員全員が対象になるとは限りません。
『加入対象となる従業員の範囲』について,次に説明します。
3 社会保険加入対象となる従業員|労働『時間・日数』で決まっている
<健康保険・厚生年金保険の加入対象従業員>
次のいずれも満たす者
あ 『時間』75%要件
1日or1週間の所定労働時間がフルタイム従業員のおおむね『4分の3』以上
い 『日数』75%要件
1か月の所定労働日数がフルタイムのおおむね『4分の3』以上
※健康保険法3条,厚生年金保険法6条
※内かん(通達);昭和55年6月6日厚生省・社会保険庁
通達は次の資料のp7に掲載されています。
外部サイト|厚生労働省|公的年金制度の企画立案と事業実施の関係について(参考資料)
<雇用保険の加入対象従業員>
次のいずれも満たす者
あ 『時間』要件
1週間の所定労働時間が20時間以上
い 『日数』要件
31日以上引き続き雇用されることが見込まれる
※雇用保険法6条
<労災保険の加入対象従業員>
『雇用』すべてが対象
※労働者災害補償保険法3条1項
4 労災保険は労働に関して従業員が負傷,疾病というになった場合に給付される
<労災保険の給付対象事故>
あ 原因
ア 業務上災害イ 通勤災害 ※労災保険法7条1項1号,2号
い 生じた事故
ア 負傷イ 疾病ウ 障害が残った(後遺症)エ 死亡
5 『業務上災害』は『業務起因性』『業務遂行性』があれば認められる
(1)業務上災害の要件
一般に,仕事上の事故については労災保険が出ると言われます。
これは,業務上災害のことです。
『業務災害』と言うこともあります。
<業務上災害が認められる基準>
次の両方に該当する場合,『業務上災害』として,労災保険の給付対象となる
あ 業務起因性
い 業務遂行性
※労災保険法7条1項1号
非常に簡単に言うと,『業務自体に含まれるリスクかどうか』ということです。
(2)災害時の事故が業務上災害に該当することもある
災害時に,従業員が怪我をする,ということが生じます。
理論的には『天災が想定外』であった→『業務自体に含まれるリスク』ではない→業務起因性なし,となります。
しかし,『天災以外の要因』もあるはずです。
例えば『設備の設置状況,工夫によって防げた(はずだ)』というようなことです。
具体的なその天災内容,例えば,地震の程度によっては,『設備に原因がある』→業務起因性あり,と判断されます。
6 雇用保険の給付対象の整理|求職者・就職促進・教育訓練・雇用継続給付
雇用保険の支給は『失業』(失業等給付)が主なものです。
『失業等給付』の内容をまとめます。
<雇用保険の失業等給付|整理>
あ 求職者給付
従業員が『失業』した場合に支給される
俗に『失業手当』『失業保険』と呼ばれる
《給付される『手当』内訳》
ア 基本手当イ 技能習得手当ウ 寄宿手当エ 傷病手当
い 就職促進給付
う 教育訓練給付
え 雇用継続給付
7 解雇に至った場合,元従業員は失業給付を受けられる
(1)職を失った場合,一定の手続により失業給付を受給できる
雇用保険の内容の典型的なものは失業給付です。
失業などによって職を失った場合に,一定の要件,期間について保険金の給付を受けられる制度です。
(2)大規模な災害による失業,については雇用保険の特例が適用される
例えば,大震災により,事業所自体や設備が損壊した場合,事業自体が継続できません。
法的には解雇が認められることになります。
当然,元従業員は生活の糧に困ります。
この点,災害の規模が大きい場合,『激甚災害』として政府に指定されます。
激甚災害による失業については,雇用保険の特例として速やかに失業手当が給付されます。
条文
[労働者災害補償保険法;労災保険法]
第七条 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付
二 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付
三 二次健康診断等給付
○2 前項第二号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一 住居と就業の場所との間の往復
二 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三 第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)
○3 労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第二号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。