【別除権×民事再生|担保権消滅請求・別除権協定|合意事項・手続】
1 別除権|基本事項|担保権のある債権
2 別除権×再生債権|不足額は通常の再生債権となる
3 別除権行使×問題点|担保権実行により事業再生ができなくなる
4 別除権対策|担保権消滅請求|債務者から担保権を消滅させられる
5 別除権協定|概要|担保金なしで別除権の行使を防ぐ
6 別除権協定|合意事項|返済と担保権不実行
7 別除権協定|手続|監督委員の同意が必要
1 別除権|基本事項|担保権のある債権
民事再生の手続において『別除権』は特別扱いなされます。
『別除権』の基本的事項をまとめます。
<別除権|基本事項>
あ 別除権となる担保権
再生債務者の財産についての担保権
例;特別の先取特権・質権・抵当権・留置権
い 別除権の効果|基本
再生手続外で行使することができる
※民事再生法53条
う 別除権の行使|具体的内容
民事執行法による担保権実行など
→優先的に弁済を受けることができる
2 別除権×再生債権|不足額は通常の再生債権となる
別除権は特別扱いですが『不足額』については一般の『再生債権』となります。
<別除権×再生債権>
あ 別除権不足額部分→再生債権
別除権の行使で弁済を受けられないと確定した部分
→『再生債権』として行使できる
※民事再生法88条本文
い 別除権者×再生債権の届出
債権届出に次の事項を記載する
ア 別除権の目的である財産イ 別除権の不足見込額
※民事再生法94条
3 別除権行使×問題点|担保権実行により事業再生ができなくなる
別除権の特別扱いは『債務者』の立場からは問題と言えます。
<別除権行使×問題点>
あ 別除権行使の問題点
別除権が行使された場合
→再生債務者は,担保目的物である財産を失う
→再生債務者の事業にとって不可欠の財産である場合
→事業の再生に大きな支障が生じる可能性がある
い 別除権行使を避けるべき財産|例
ア 本社・主たる営業所イ 主要な工場・生産設備
4 別除権対策|担保権消滅請求|債務者から担保権を消滅させられる
債務者サイドから別除権に対応する手続が用意されています。
<別除権対策|担保権消滅請求>
あ 担保権消滅請求|概要
再生債務者から『担保権消滅』を実現する制度
い 担保権消滅請求|要件
ア 事業継続に不可欠
目的財産が再生債務者の事業の継続に不可欠である
イ 担保金納入
当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付する
ウ 裁判所の許可
『ア・イ』の要件を確認
→裁判所が許可する
う 担保権消滅|効果
裁判所の許可により,担保権が消滅する
え 利用するハードルの高さ
納付すべき金銭の準備がハードルとなる
※民事再生法148条〜
5 別除権協定|概要|担保金なしで別除権の行使を防ぐ
担保金がなくても『別除権の問題をクリアする』方法があります。
<別除権協定|概要>
あ 別除権協定|概要
再生債務者・債権者が協議をして次の合意をする
ア 担保目的物の評価額を分割して弁済するイ 別除権の行使を猶予する
い 別除権協定|メリット
ア 別除権行使を回避できる
事業の継続・再生計画の実現が可能となる
イ 担保金の調達の免れる
担保権消滅請求の場合には『担保金調達』が必要
→別除権協定では『担保金』は不要である
6 別除権協定|合意事項|返済と担保権不実行
別除権協定を結ぶ場合の合意事項=条項についてまとめます。
<別除権協定|合意事項>
あ 対象の特定
ア 債権額イ 担保権の内容
い 別除権評価相当額の弁済方法
対象財産評価に相当する金額の弁済内容
例;利息・分割回数・期間など
う 担保権消滅
協定に従った弁済が完了した場合
→担保権の消滅・担保権の抹消登記手続をする
え 担保権不実行
協定内容が履行される限り,債権者は担保権を実行しない
お 停止条件
協定が効力を生じる停止条件
=監督委員の同意
7 別除権協定|手続|監督委員の同意が必要
別除権協定を締結する場合の具体的な手続についてまとめます。
<別除権協定|手続>
あ 再生計画を立案する前の場合
別除権協定を再生計画案に盛り込む
い 再生計画を立案の後の場合
ア 別除権評価額の算定
対象財産の評価額を算出する
イ 別除権不足見込額の算定
別除権不足見込額=被担保債権−当該評価額
別除権不足見込額が『再生債権』となる
う 監督委員の同意
いずれの場合も,監督委員の同意が必要である
※民事再生法54条2項