【株主総会決議・取締役会の瑕疵→解消|取消・無効確認・不存在確認の訴え】

1 株主総会決議の解消|決議の瑕疵
2 株主総会決議取消の訴えの対象(上記『※1』)
3 株主総会決議無効確認の訴えの対象(上記『※2』)
4 株主総会決議不存在確認の訴えの対象(上記『※3』)
5 取締役会決議が不十分→会社法に解消方法の規定がない

1 株主総会決議の解消|決議の瑕疵

一定の重要事項は,株主総会で決議することとされています。
この決議要件については,会社法で細かいルールが設定されています。
別項目|株主総会|決議事項と決議要件|まとめ

ここで,実際に『決議』が不十分ということが生じることがあります。
手続のルールに違反した,とか,形式的な議事録は作成したけど現実の『決議』を行っていない,などが典型です。
このような場合は,常識的に『決議の効力がない』と言えるでしょう。
しかし,『決議の効力を否定する』という具体的な方法は,一定の訴訟としてこれも会社法でルールが設定されています。
大きく分けて,3種類に分けられます。

<株主総会決議に関する訴え>

項目 取消の訴え 無効確認の訴え 不存在確認の訴え
対象(要件) 一定の手続違反(※1) 『決議あり』→法令違反(※2) 『決議なし』(決議の不存在(※3)
原告 株主・取締役・執行役・監査役・清算人 限定なし 限定なし
被告 会社 会社 会社
提訴期間 総会決議から3か月 限定なし 限定なし
遡及効;会社法839条 将来効(過去に遡らない) 過去から無効 過去から無効
対世効;会社法838条 あり あり あり
条文(会社法) 831条 830条 830条

3つの『訴訟』について,その対象(※1〜3)については次に説明します。

2 株主総会決議取消の訴えの対象(上記『※1』)

株主総会決議『取消』の訴えの対象は,3つの訴訟の中では『最も軽い』カテゴリです。
『手続違反』がメインです。

<株主総会決議取消の訴えの対象(上記※1)>

あ 招集・決議の手続違反

株主総会招集手続,または決議の方法が法令もしくは定款に違反している

い 決議内容の定款違反

定款に違反する決議を行った

う 著しく不当な決議

決議について特別の利害関係がある株主が議決権を行使した+著しく不当な決議

3 株主総会決議無効確認の訴えの対象(上記『※2』)

株主総会決議無効確認の訴えの対象は,要するに『無効』であることが明らかである場合です。
『取消訴訟』よりも『違反の程度が高い』と言えます。
一方,『違反している』とは言え,『決議自体は存在している』というものが対象です。

<株主総会決議無効確認の訴えの対象(上記※2)>

決議内容が法令に違反する

4 株主総会決議不存在確認の訴えの対象(上記『※3』)

株主総会決議不存在確認の訴えの対象は,文字どおり『決議自体が存在しない』というものです。
形式的に議事録だけ作成したけど,総会の開催自体をしていない,というのが典型例です。
また,一応株主が集まったけれど『決議』と言えるようなプロセスではなかった,という場合も含みます。
結局,『不存在確認』と『無効確認』の境は曖昧・相対的なものなのです。

<株主総会決議不存在確認の訴えの対象(上記※3)>

決議が存在しないこと
ア 株主総会が開催されていないイ 一応開催されたが手続上の瑕疵が著しい→決議があったとは言えない

5 取締役会決議が不十分→会社法に解消方法の規定がない

以上は『株主総会』の決議に問題があった場合に,効力を否定する手続の説明でした。
一方,『取締役会』の決議にも,同様に問題(瑕疵)が生じることもよくあります。
この点,会社法には『取締役会決議の取消・不存在確認・無効確認』についての訴訟手続の規定はありません。
実際に決議の有効性に対立がある場合は,一般的な法解釈として次のような訴訟を提起し,審理を受けることが可能です。

<取締役会決議の効力を審理する訴訟>

あ 取締役会決議無効確認請求訴訟
い 取締役会決議不存在確認請求訴訟

実際の訴訟においては,『効力を維持する』方向で例外的・救済的な解釈が取られることも多いです。

<取締役会決議の瑕疵→効力を維持する解釈|判例>

あ 事例

一部の取締役が『招集』されず→欠席→決議が行われた

い 裁判所の判断

・原則として取締役会決議は無効になる
・しかし,『当該取締役が出席してもなお決議の結果に影響がない』場合は決議の効力を維持する
※最高裁昭和44年12月2日

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