【ペットの飼育・看護承継|飼い主の生前スタート方式|契約上の地位の移転】

1 『里親システム=2段階管理システム』×生前スタート方式|ホットスタート
2 里親システム|生前スタート方式|『飼い主承継者』が承継する権限
3 里親システム|生前スタート方式|当事者・承継タイミングのまとめ
4 里親システム|『生前スタート』のメリット

本記事では,飼い主の生前から『里親システム』を稼働させる方法を説明します。
前提となる『飼い主が亡くなった時のペットの承継』の基本事項は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|飼い主死後のペットの幸せ|里親システム=里親+里親管理人+飼い主承継者

1 『里親システム=2段階管理システム』×生前スタート方式|ホットスタート

里親システムを『飼い主の死後』に稼働させるのが通常の方法です。
これを『飼い主の生前』にまで,逆方向に延長させる,方式があります。
メリットが大きいと言えます。

<里親システム|2段階管理システム×生前スタート方式>

あ 2段階管理委託契約

3者間で将来発動する『2段階の管理・監督』の内容を合意する
→契約書にしておく

い 里親稼働タイミング

『飼い主が飼育できない』状態になった場合に稼働がスタートする
例;飼い主の病気・怪我・入院・死亡時など

う 里親としての任務遂行

ア ペットの確保・引き取り 『い』のタイミングで,すぐに『ペットを里親が引き取る』
イ 飼育内容 事前に定めた内容どおりの飼育を遂行する
《規定された飼育内容》
・食事の回数
・食事(餌)の種類
・散歩の回数
・予防接種(内容・タイミング)
・トリミング(内容・タイミング)

『飼い主が亡くならなくても飼育できない』という窮地の対応が重要なところです。
事前に『業務の代行をスタンバイにしておく』というメカニズムです。
ITにおける『サーバーのホットスタート』の『ペットケア版』とも言えましょう。
『任意後見契約』とセットにする,という方法もあります。
関連コンテンツ|認知症→財産デッド・ロックリスク|法定後見・任意後見

2 里親システム|生前スタート方式|『飼い主承継者』が承継する権限

上記スキームでは,飼い主の死亡や入院などのタイミングで『飼い主の立場の承継』が生じます。
『飼い主』から予め特定していた『飼い主承継者』に『承継』される内容を整理します。

<飼い主の権限承継>

権限・地位 内容
資金(財産) 飼育・看護に必要な資金
業務内容(義務) 『里親管理人』の監督+費用支払
契約上の地位 『里親システム』の委託契約上の当事者たる地位

3 里親システム|生前スタート方式|当事者・承継タイミングのまとめ

(1)里親システム|生前スタート方式|まとめ

里親システムの生前スタート方式の『関係当事者・承継タイミング』をまとめます。

<里親システム『生前スタート』方式|まとめ>

あ 概要

飼い主の生前に3者で『2段階管理契約』を締結する
飼い主が亡くなった時に『飼い主の契約上の地位』を『第三者(飼い主承継者)』が承継する

い 当事者の整理
タイミング 総合的責任者=財産保管者 中間管理者 現実の管理・飼育者
飼い主の健在時 飼い主 里親管理人 飼い主
飼い主の入院時など 飼い主 里親管理人 里親
飼い主の死亡後 飼い主承継者 里親管理人 里親

(2)里親システム|ノーマル=死後スタート方式(参考)

ここで,通常=『里親システムが飼い主の死後に稼働スタートする』方式と比較します。

<里親システム『死後スタート』方式|まとめ(参考)>

あ 概要

飼い主の生前には特に『飼い主以外が飼育に関与する』ことは生じない
飼い主の死後に初めてペットの飼育・看護が生じる
『財産の動き』の時期はスキームによって異なる

い 当事者の整理
タイミング 総合的責任者=財産保管者 中間管理者 現実の管理・飼育者
飼い主の健在時
飼い主の死亡後 飼い主承継者 里親管理人 里親

飼い主が亡くなる『前』には『里親システム』は一切稼働していません。
亡くなった『後』に初めて稼働が始まる,ということになります。

4 里親システム|『生前スタート』のメリット

里親システムの『生前スタート』と『死後スタート』の違いをまとめます。

<里親システム(2段階管理方式)の設定タイミング×違い>

あ 生前スタート方式

ア 概要 飼い主の生前に『里親システム』稼働が始まる
イ 特徴 ・当事者が確定する+拘束力が生じる
・飼い主が病気や怪我の時にも効力を生じる→役立つ

い 死亡時スタート方式

ア 概要 飼い主の死亡時に『里親システム』稼働が始まる
イ 特徴 『急いで当事者(里親など)を探す』ということが生じる
→すぐに飼育・看護を承継できない,というクリティカルなリスクがある

以上のように『飼い主が亡くなった後のペットのケア』の方法を『生前』にも活かすことは有用なのです。

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