【『相続人全員』ではない参加者による遺産分割の有効性(基本)】
1 遺産分割協議×成立要件|全員の同意が必要
遺産分割協議の成立のための基本的な要件をまとめます。
遺産分割協議×成立要件|全員の同意が必要
あ 意思決定方法
共同相続人全員が合意すれば成立する
『過半数』『多数決』ではない
い 解釈論
条文上の明確な規定はない
性質上当然のことである
う 『共同相続人』|用語の意味
復数の『相続人』という意味である
このように『全員の意見が一致すること』が要求されます。
1人だけでも『反対』があると全部が不成立となります。
なお、一部の財産についてだけ合意する、ということもあります。
この場合、合意した財産だけ『遺産分割が完了』となります。
詳しくはこちら|遺産分割×遺産の一部|遺産の欠落|第n次分割・余りを残さない工夫
2 参加者が欠落した遺産分割の有効性
遺産分割協議に『参加者が不足していた』ということもあります。この場合は、遺産分割は原則的に無効となります。
参加者が欠落した遺産分割の有効性
あ 全員参加(参考)
『共同相続人』全員が参加し合意した場合
→遺産分割協議は有効に成立する
い 欠落者あり
『共同相続人』の一部が協議に参加しなかった場合
→原則として遺産分割協議は無効となる
事情によっては例外的に有効となることもある
3 参加者欠落の具体的状況と遺産分割の有効性(概要)
遺産分割に参加者が欠落するケースはよくあります。原則的に遺産分割は無効となりますが、救済的に有効とする民法上の規定や解釈もあります。
これについては別に詳しく説明しています。
詳しくはこちら|参加者が欠落した遺産分割の具体的状況と有効性
4 遺産分割の当事者と登記(共有物分割との比較)
参考として共有物分割では、参加するためには登記が必要です。この点遺産分割では登記は不要です。この比較をまとめておきます。
遺産分割の当事者と登記(共有物分割との比較)
あ 遺産分割の当事者と登記
ア 理論
相続は『対抗関係』ではない
遺産分割に参加する地位は『所有者』ではない
『相続人』という法的地位である
→遺産分割に参加するために共有持分の登記は必要ではない
イ 実務の傾向
実際に相続登記未了のまま遺産分割協議・調停を行う
→遺産分割完了後に合意どおりの登記を行うというケースが多い
い 共有物分割の当事者と登記(参考)
『共有持分の譲受人』と『他の共有者』は対抗関係にある
→共有物分割に参加するためには共有持分の登記が必要である
※大判大正5年12月27日
※最判昭和46年6月18日
詳しくはこちら|共有物分割(訴訟)の当事者(共同訴訟形態)と持分割合の特定
5 遺産分割協議×相続人以外の参加|有効性
遺産分割に『相続人以外の者』が参加するケースもあります。
実際には『後から相続人ではないことになった』ということが多いです。
このような場合の遺産分割の有効性の解釈論をまとめます。
遺産分割協議×相続人以外の参加|有効性
あ 前提事情
遺産分割協議に『相続人以外』の者が参加した
例;後から婚姻・養子縁組無効の判決が確定した(前記)
い 遺産分割協議・有効性
遺産分割協議自体は有効である
う 事後的解決方法
『相続人以外の者』が取得したとされていた財産
→取得・承継されない
→『未分割=遺産共有』状態となる
→再度、遺産分割が必要
=いわゆる『2次分割』である
詳しくはこちら|遺産分割×遺産の一部|遺産の欠落|第n次分割・余りを残さない工夫
※東京家裁昭和34年9月14日
6 n次相続×遺産分割協議|解釈論
遺産分割の参加者が『純粋な相続人』ではないケースもあります。
相続が連続して生じた場合にこの状態になります。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|n次相続×遺産分割協議|関係の薄い者が参加→合意困難になる
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