【限定承認×課税|みなし譲渡所得・納税の優先順位・弁済ミス→賠償責任】

1 限定承認×課税|みなし譲渡所得
2 限定承認×課税|納税の優先順位
3 限定承認×課税|相続人のリスク=賠償責任|事例
4 限定承認×相続人のリスク→利用されにくい

1 限定承認×課税|みなし譲渡所得

限定承認は,この手続自体がマイナーです。
限定承認を行った場合の『税金の扱い』も見落としがちなテーマです。
弁護士でも慣れていないとミスが生じます(後記)。
まずは限定承認の場合の基本的な税務の扱いをまとめます。

<限定承認×課税|みなし譲渡所得>

あ 限定承認×課税

相続・包括遺贈に対して『みなし譲渡所得』が課税される

い みなし譲渡所得|概要

相続開始時点での『被相続人の資産の増加益』を算定する
→これを『譲渡所得』が発生したとみなす
※所得税法59条1項1号

う 税務申告

相続人は『準確定申告』をする必要がある

2 限定承認×課税|納税の優先順位

『課税』の問題は『限定承認』の手続の中に組み込む必要があります。
『弁済』の対象の1つとなるのです。

<限定承認×課税|納税の優先順位>

最優先(優先順位1)=『優先権を有する債権』となる
→納税は『相続債権者への配当=優先順位2』より優先である
※民法929条ただし書
※国税徴収法8条;国税優先の原則

『弁済』のプロセスについては別記事で説明しています(リンクは末尾に表示)。

3 限定承認×課税|相続人のリスク=賠償責任|事例

限定承認の手続において『課税』ミスが生じてしまったケースを紹介します。

<限定承認×課税|相続人のリスク=賠償責任|事例>

あ 限定承認における租税弁済ミス

みなし譲渡所得の準確定申告・納税を怠った
相続人が自身の財産から納税する義務を負った
※民法934条

い 相続人代理人弁護士の責任

『弁済を実施した弁護士=相続人代理人』の判断ミス
→賠償責任が認定された
※『弁護士賠償責任保険の解説と事例 第5集』全国弁護士協同組合連合会『2−(4)』

4 限定承認×相続人のリスク→利用されにくい

限定承認ではミス→リスクが具体化,ということも生じがちなのです。
構造的な要因をまとめます。

<限定承認×相続人のリスク→利用されにくい>

あ 構造的な要因分析

弁済は『裁判所が主催』するわけではない
相続人(の代理人弁護士)が実施する
→相続人(代理人)の判断・責任を前提とする手続である(前記事例)
→『限定承認』の手続が利用されにくい理由の1つである

い 限定承認を安易に選択肢から外す現象

『きちんと利用すれば限定承認が最適な選択肢である』ケースも多い
→慣れていない弁護士は『限定承認を選択肢から除外する』傾向がある

このように『限定承認が使われない』という現象につながっています。

弁護士法人 みずほ中央法律事務所 弁護士・司法書士 三平聡史

2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分

相続や離婚でもめる原因となる隠し財産の調査手法を紹介。調査する財産と入手経路を一覧表にまとめ、網羅解説。「ここに財産があるはず」という閃き、調査嘱託採用までのハードルの乗り越え方は、経験豊富な講師だから話せるノウハウです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【限定承認における弁済の優先順位と売却の方法(競売と任意売却)】
【法定単純承認|基本・種類|背信行為=隠匿・私的消費・財産目録不記載】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00