【法定単純承認|基本・種類|背信行為=隠匿・私的消費・財産目録不記載】
1 法定単純承認|制度概要・趣旨
相続人の選択肢は『相続承認・相続放棄・限定承認』の3つがあります(別記事;リンクは末尾に表示)。
法定単純承認|制度概要・趣旨
一定の事情があると、相続人の気持ちとは関係なく『単純承認』として扱われます。
これを『法定単純承認』と言います。
2 法定単純承認|種類
法定単純承認に該当する行為が決まっています。
法定単純承認|種類
イ 熟慮期間の経過ウ 背信行為 ※民法921条
いずれも、具体的にどのような行為が該当するか、が問題になります。
「処分」による法定単純承認は別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|「処分」による法定単純承認の基本(趣旨・「処分」にあたる行為)
また、熟慮期間の詳しい内容についても別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|相続放棄の熟慮期間の起算点とその繰り下げ(限定説と非限定説)
以下『背信行為』について説明します。
3 法定単純承認|背信行為
法定単純承認のうち『背信行為』については、条文上3つの行為が規定されています。
法定単純承認|背信行為
それぞれの内容については次に説明します。
4 法定単純承認|隠匿
『隠匿』の内容についてまとめます。
法定単純承認|隠匿
あ 基本的な解釈
相続債権者から相続財産の所在を不明にすること
い 一般的な『形見分け』
『隠匿』に該当しない
う 『形見分け』を超える取得
『隠匿』に該当する
例=新品同様の洋服・毛皮を含む遺品をすべて持ち帰る行為
※東京地裁平成12年3月21日
5 法定単純承認|私的な消費
『私的な消費』についてまとめます。
法定単純承認|私的な消費
あ 基本的な解釈
相続債権者の不利益になることを承知のうえで相続財産を消費すること
※遠藤浩ほか『民法(9)相続(有斐閣双書)増補補訂版』有斐閣p160
い 遺産の賃借権の賃料|判例
ア 事例
相続人が限定承認をした
その後、遺産である土地賃借権を自己のために利用した
相続財産の家屋を売却した
借地の賃料を支払った
イ 裁判所の判断
『私的な消費』に該当する
→法定単純承認を認めた
※大判昭和12年2月9日
6 法定単純承認|悪意の財産目録への不記載
『悪意で財産目録へ記載しない』という規定の内容を説明します。
法定単純承認|悪意の財産目録への不記載
あ 基本的な解釈
相続債権者を害する意図をもって、相続財産を財産目録に記載しないこと
い マイナス財産|判例
記載対象にはマイナス財産も含む
※最高裁昭和61年3月20日

2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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