【「処分」による法定単純承認の基本(趣旨・「処分」にあたる行為)】
1 「処分」による法定単純承認の基本(趣旨・「処分」にあたる行為)
相続人の行為によって、単純承認をしたものとして扱われるルール(法定単純承認)があります。
詳しくはこちら|法定単純承認|基本・種類|背信行為=隠匿・私的消費・財産目録不記載
法定単純承認の1つは、相続人が相続財産を「処分」するというものです。本記事では、このルールの趣旨や、「処分」にあたる行為について、基本的事項を説明します。
2 法定単純承認の趣旨
遺産の「処分」は法定単純承認のうちの1つです。
『処分』が単純承認とみなされる趣旨をまとめます。
法定単純承認の趣旨
※最高裁昭和42年4月27日
3 法定単純承認の「処分」の判断基準(概要)
(1)「処分」の時期→相続放棄・限定承認の前
実務では、相続人による「処分」が、法定単純承認となるのか、ということが問題となることがあります。
まず、法定単純承認にあたる「処分」は、相続開始後(「相続財産」となった後)であり、かつ、相続放棄や限定承認をする前の行為です。
詳しくはこちら|法定単純承認の「処分」の判断基準(民法921条1号)
(2)「処分」にあたる行為の判断基準
相続人の行為が「処分」にあたるかどうか(判断基準)、については多くのルール(解釈)があります。別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|法定単純承認の「処分」の判断基準(民法921条1号)
4 相続財産以外の処分→法定単純承認に該当しない
法定単純承認は『遺産=相続財産』を対象とした行為です。
『相続財産以外』を処分しても法定単純承認に該当しません。
曖昧なケースでの判例を紹介します。
相続財産以外の処分→法定単純承認に該当しない
あ 事案
ア 生命保険
被相続人は生前、相続人を受取人とした生命保険に加入していた
被相続人の死亡後、相続人が生命保険金を請求・受領した
イ 相続債務弁済
上記保険金を用いて、相続債務の一部を弁済した
い 裁判所の判断
「処分」に該当しない(相続放棄を認めた)
※福岡高裁宮崎支部平成10年12月22日
本記事では、法定単純承認の基本的事項について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に相続承認、相続放棄など、相続に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
相続や離婚でもめる原因となる隠し財産の調査手法を紹介。調査する財産と入手経路を一覧表にまとめ、網羅解説。「ここに財産があるはず」という閃き、調査嘱託採用までのハードルの乗り越え方は、経験豊富な講師だから話せるノウハウです。