【祭祀主宰者・祭祀財産の承継→相続とは無関係|承継者・相続への影響・相続税】

1 祭祀主宰者の指定|相続権とは無関係→内縁の妻でも良い
2 祭祀財産の承継×一般の相続|相互に影響なし
3 祭祀財産の承継×相続権・相続放棄・限定承認|影響なし
4 祭祀財産の承継→相続における特別扱いはない
5 税務上も『墓所・祭具』は相続税非課税

1 祭祀主宰者の指定|相続権とは無関係→内縁の妻でも良い

『祭祀主宰者』は『相続』つまり『遺産の承継』とは別問題です。

<祭祀主宰者と『相続』は別>

あ 『相続人』は適用されない

相続人以外が『祭祀主宰者』となる(指定する)ことも可能
典型例;内縁の妻(後述)

い 祭祀財産の承継→『相続』に影響なし

『祭祀主宰者』となった場合
→『承継できる財産』が増えるor減るということはない(後記)

2 祭祀財産の承継×一般の相続|相互に影響なし

祭祀主宰者は祭祀供養物=祭祀財産を承継します。
『財産の承継』なのですが,法律的には『相続財産』ではありません。
『相続』には影響を与えません。

<祭祀財産×一般の相続>

あ 基本事項

祭祀財産は相続財産から除外される

い 一般の相続・遺留分

相続分や遺留分算定の基礎に加えられない

う 相続財産分離

債権者による相続財産分離の手続が行われた場合
→祭祀財産は『相続財産』から除外される

3 祭祀財産の承継×相続権・相続放棄・限定承認|影響なし

祭祀財産は相続に影響を与えません(前述)。
『相続放棄』『限定承認』の手続でも,この扱いは同じです。

<祭祀財産×相続権・相続放棄・限定承認>

あ 基本事項

祭祀財産は『相続権・相続放棄・限定承認』と相互に影響しない

い 相続放棄をした者・相続人でない者

祭祀承継者になれる

う 限定承認をした者

祭祀財産を承継した場合
→責任財産としてカウントされない
関連コンテンツ|限定承認|基本|活用場面・対象財産・相続債権者の請求訴訟・相殺

4 祭祀財産の承継→相続における特別扱いはない

祭祀主宰者になると実質的にプラス・マイナスと思える事情があります。
そこで相続で何らかの反映がある,という発想もよくあります。
しかし,法的な扱いでは『特別扱い』はありません。

<祭祀財産×相続における特別扱い>

あ 前提事情

ア 祭祀財産を承継したイ 祭祀主宰者の指定を受けた 例;喪主として葬儀を執り行った

い ありがちな発想→認められない

次のような発想はあるが法的に認められない
ア 祭祀主宰の労力の対価 特別の相続分が与えられる(ことはない)
イ 祭祀料(実費) 祭祀主宰のために,費用を要した
→この分,他の相続人よりも多くの遺産を受け取る(ことはない)
※東京高裁昭和28年9月4日

5 税務上も『墓所・祭具』は相続税非課税

税務上も『墓所や祭具』は『相続財産』としては扱われません。
つまり,相続税の課税対象外となっています。
このルールを利用した節税策も考案されています。
詳しくはこちら|税務上のみなし相続財産や控除・非課税(生命保険金・死亡退職金・墓地・礼拝施設)

<参考情報>

『月報司法書士2015年6月』日本司法書士会連合会p15〜

弁護士法人 みずほ中央法律事務所 弁護士・司法書士 三平聡史

2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分

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