【『撤回の撤回・撤回が効力を生じない』の具体例と解釈(全体)】
1 撤回が撤回される具体的流れ
遺言は自由に『撤回』することができます。
詳しくはこちら|遺言の訂正(変更・撤回)の基本(全体・ニーズ)
そうすると『撤回する遺言』をさらに『撤回』することが生じます。
単純に考えると『元の遺言が復活する』と思えます。
しかし解釈論はちょっと複雑です。
最初に、前提となる事情・経緯をしっかりと整理しておきます。
撤回が撤回される具体的流れ
2 撤回が『効力を生じない』具体的流れ
形式的に遺言を撤回しても『撤回の効果が生じない』こともあります。
この場合も、単純に『元の遺言が復活する』とは限りません。
解釈論に入る前に前提としての流れを整理しておきます。
撤回が『効力を生じない』具体的流れ
あ 原遺言作成
第1遺言を作成した
い 初回撤回
第1遺言が『撤回』された
具体的行為は3種類がある(後記※1)
う 効力を生じない
『初回撤回(い)』が『効力を生じない』ことになった
『効力を生じない』の解釈論は後述する
3 遺言の『撤回』の種類(概要)
以上の事情・流れの整理の中で遺言の『撤回』が登場しました。この点、一般的な『遺言の撤回』の種類はいくつかあります。ストレートに遺言で撤回する方法と、他の行為が遺言の撤回とみなされるというものがあります。概要をまとめます。
遺言の『撤回』の種類(概要)(※1)
あ 『撤回』遺言
新たな遺言で『撤回』と記載した
い 『抵触』遺言
新たな遺言が以前の遺言に『抵触』する
う 『抵触生前処分』
遺言作成後の生前処分が遺言に『抵触』する
例;売却・贈与
え 『遺言破棄』
遺言そのものを遺言者が破棄する
お 目的物破棄
遺言内容の目的物を遺言者が破棄する
詳しくはこちら|遺言の撤回の種類(基本的解釈・具体例)
撤回自体が解消される、ということ自体がちょっと複雑です。
理解しにくいので以上のように前提となる事情を整理しました。
ここまでの整理を元にして、解釈論に入ってゆきます。
4 『撤回の撤回・撤回が効力を生じない』の規定
遺言の撤回を撤回するとか『撤回が効力を生じない』ケースがあります(前記)。
この場合にどのような扱いになるのかという解釈は複雑です。
まずは解釈論の入り口として、条文の規定から確認しておきます。
『撤回の撤回・撤回が効力を生じない』の規定
あ 条文上の規定(原則)
『撤回の撤回』or『撤回が効力を生じない』場合
→第1遺言は復活しない
※民法1025条
い 条文上の規定(例外)
『撤回』について『詐欺・強迫による取消』を行った場合
→第1遺言が復活する
※民法1025条ただし書
う 解釈論
『あ・い』の規定にはいろいろな解釈論がある
規定どおりの結論にならないこともある(後記※2)
5 『撤回の撤回・効力を生じない』の解釈(全体)
撤回の撤回などの条文はシンプルです(前記)。
これの解釈論は複雑ですので、まずは『解釈論の分類』をします。
『撤回の撤回・効力を生じない』の解釈(全体)(※2)
あ 初回撤回→2回目撤回
初回撤回の種類によって分類する
ア 初回撤回=『撤回遺言』イ 初回撤回=『抵触遺言』ウ 初回撤回=『抵触生前処分』
詳しくはこちら|遺言|初回撤回→2回目撤回|元の遺言の復活の有無
い 初回撤回が『効力を生じない』
『効力を生じない』の解釈論がある
詳しくはこちら|撤回が『効力を生じない』の解釈と元の遺言の復活の有無
解釈論を大きく『あ』と『い』に分けました。
それぞれの内容については別の記事で詳しく説明しています。
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