【遺言|初回撤回→2回目撤回|元の遺言の復活の有無】

1 遺言|初回撤回→2回目撤回|分類
2 初回撤回=『撤回遺言』|その後の撤回|前提
3 初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『撤回遺言』
4 初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『抵触遺言』
5 初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『抵触生前処分』
6 初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『遺言破棄』
7 初回撤回=『抵触遺言』|2回目撤回=『撤回遺言』
8 初回撤回=『抵触生前処分』|その後の撤回・取消

1 遺言|初回撤回→2回目撤回|分類

遺言の撤回自体をさらに撤回するというケースがあります。
このような状況自体はいくつかのバリエーションがあって複雑です。
(別記事『撤回の撤回』;リンクは末尾に表示)
本記事ではこのうち『初回の撤回を後から撤回した』ものについて説明します。
まずこの前提の事情自体が分かりにくいので整理しておきます。

<遺言|初回撤回→2回目撤回|分類>

あ 初回撤回

初回撤回には次のような種類がある
本記事では,この分類に従って説明する
ア 初回撤回=『撤回遺言』イ 初回撤回=『抵触遺言』ウ 初回撤回=『抵触生前処分』

い 2回目撤回

具体的内容はいくつかある(後記)

2 初回撤回=『撤回遺言』|その後の撤回|前提

まずは初回の撤回が『遺言による撤回』というケースを説明します。
具体的なバリエーションをまとめます。

<初回撤回=『撤回遺言』|その後の撤回|前提>

あ 原遺言

第1遺言を作成した

い 初回撤回=『撤回』遺言

第2遺言を作成した
内容=『第1遺言を撤回する』

う 第2遺言を撤回した

具体的な行為はいくつかの種類がある
ア 第3遺言=『撤回遺言』イ 第3遺言=『抵触遺言』ウ 『抵触生前処分』エ 『遺言破棄』

次に,最後の『ア〜エ』について順に説明を進めます。

3 初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『撤回遺言』

2回目の撤回が『撤回する遺言』というケースをまとめます。

<初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『撤回遺言』>

あ 事情・経緯

第3遺言を作成した
内容=『第2遺言を撤回する』

い 解釈論|原則

第1遺言は復活しない
※民法1025条

う 解釈論|例外|基準

第1遺言を復活させる希望・意思が明らかな場合
→復活を認める

え 具体的事例|判例

第3遺言に次の事項が明示されていた
『第2遺言を撤回し第1遺言を有効とする』
→第1遺言の復活を認めた
※最高裁平成9年11月13日

お 判例の位置付け・注意

見解の賛否・射程について争いあり
→再現可能性には一定の限界がある

4 初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『抵触遺言』

2回目の撤回が『第2遺言と抵触する遺言』というケースをまとめます。

<初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『抵触遺言』>

あ 事情・経緯

第3遺言を作成した
内容が『第2遺言』と抵触する
→抵触部分は『第2遺言の撤回』とみなされる

い 解釈論

第3遺言は有効である
→解釈論の問題は生じない
※民法1023条

5 初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『抵触生前処分』

2回目の撤回が『第2遺言と抵触する生前処分』というケースをまとめます。

<初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『抵触生前処分』>

あ 事情・経緯

第2遺言作成後,遺言者が生前処分をした
生前処分が『第2遺言』と抵触する

い 解釈論

抵触部分は『第2遺言の撤回』とみなされる
=生前処分は有効である
→解釈論の問題は生じない

6 初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『遺言破棄』

2回目の撤回が『第2遺言の破棄』というケースをまとめます。

<初回撤回=『撤回遺言』|2回目撤回=『遺言破棄』>

あ 事情・経緯

遺言者が『第2遺言』を破棄した
→第2遺言の撤回とみなされる
※民法1024条

い 解釈論|有力説

真意は第1遺言の復活である
※中川善之助ほか『法律学全集 相続法』有斐閣p643

う 実務

存在する唯一の遺言が第1遺言という状態
→現実的には問題にならない

7 初回撤回=『抵触遺言』|2回目撤回=『撤回遺言』

初回の撤回が『第1遺言に抵触する第2遺言』というケースがあります。
さらに次の『第3遺言』で『撤回する』と記載することができます。
この場合の解釈論をまとめます。

<初回撤回=『抵触遺言』|2回目撤回=『撤回遺言』>

あ 前提事情

ア 原遺言 第1遺言を作成した
イ 初回撤回 第2遺言を作成した
内容が『第1遺言』に抵触する
ウ 2回目撤回 第3遺言を作成した
内容=『第2遺言を撤回する』

い 解釈論|原則

第1遺言は復活しない

う 解釈論|例外

第1遺言を復活させる希望・意思が明らかな場合
→復活を認める
平成9年最高裁判例(上記)の流用である
※沖野眞巳『ジュリスト臨時増刊1135号|平成9年度重要判例解説』p90

8 初回撤回=『抵触生前処分』|その後の撤回・取消

初回の撤回が『第1遺言に抵触する生前処分』というケースがあります。
この場合,その後でこの『生前処分』が撤回や取消となった場合を整理します。

<初回撤回=『抵触生前処分』|その後の撤回・取消>

あ 前提事情

ア 原遺言 第1遺言を作成した
イ 初回撤回=抵触生前処分 遺言者が生前処分を行った
生前処分が第1遺言の内容に抵触する
ウ 2回目撤回 『生前処分』を撤回or取消した

い 解釈論|原則

第1遺言は復活しない

う 解釈論|例外

生前処分が『詐欺・強迫』によるものであった場合
→第1遺言は復活する
※民法1025条

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【『撤回の撤回・撤回が効力を生じない』の具体例と解釈(全体)】
【撤回が『効力を生じない』の解釈と元の遺言の復活の有無】

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