【相続×対抗関係|遺言による承継|相続させる遺言・遺贈】
1 遺言による一般承継×対抗関係→否定
2 遺言による包括承継vs登記無効リスク|具体例
3 遺言による特定承継×対抗関係→肯定
1 遺言による一般承継×対抗関係→否定
相続に関する財産移転の法的性格の問題があります。
対抗関係になるかどうか(権利の承継を主張するために登記が必要か不要か)という解釈論です。
詳しくはこちら|相続に関する権利変動(承継)における登記の要否(対抗関係該当性)の全体像
本記事では遺言による財産の承継について説明します。
最初に,『包括承継』として扱われることもあります。
この場合には『対抗関係』は生じないことになります。
<遺言による包括承継×対抗関係→否定>
あ 法的性格
次の遺言内容は『包括承継』の性格である
ア 遺産分割方法の指定
いわゆる『相続させる』遺言など
イ 相続分の指定ウ 包括遺贈
※民法990条
い 対抗関係→否定
他の取得者が存在する場合
→対抗関係ではない
う 対抗要件
登記の有無は関係ない
→登記がなくても相続人が優先となる
※最高裁平成5年7月19日
※最高裁平成14年6月10日
2 遺言による包括承継vs登記無効リスク|具体例
遺言による包括承継は対抗関係につながりません(前記)。
逆に『登記があっても優先されない立場』も生み出します。
登記があっても無効になるリスク,と言えます。
具体例を使って説明します。
<遺言による包括承継vs登記無効リスク|具体例>
あ 相続人からの購入
不動産甲について法定相続の登記がなされている
持分割合=A・Bが各2分の1
CがAからAの持分を購入した
Cは『2分の1の共有持分権登記』を得た
い 遺言発覚
後から遺言が発見された
内容=『不動産甲はBに相続させる』
う 権利関係
遺言が優先となる
登記による保護はない
え 結論
CはBに持分登記を移転する義務がある
3 遺言による特定承継×対抗関係→肯定
遺言によって財産の承継内容が決まることがあります。
財産の承継が『対抗関係』になることとならないことがあります。
遺言の内容によって違います。
まず遺言内容が『特定承継』の場合についてまとめます。
<遺言による特定承継×対抗関係→肯定>
あ 法的性格
遺言のうち『特定遺贈』は『特定承継』の性格である
=取引・譲渡に近い法的性格である
い 対抗関係→肯定
他の取得者が存在する場合
→対抗関係となる
う 対抗要件
登記を得た者が優先となる
=2重譲渡と同じ考え方である
※民法177条
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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