【無効な遺言を死因贈与として認める・肯定と否定の裁判例】

1 押印が欠けた自筆証書遺言→死因贈与を肯定
2 日付が欠けた自筆証書遺言→死因贈与を肯定
3 日付・押印が欠けた自筆証書遺言→死因贈与を肯定
4 代筆の自筆証書遺言→死因贈与を肯定
5 無効な公正証書遺言→死因贈与を肯定
6 無効な自筆証書遺言→死因贈与も否定
7 無効な公正証書遺言→死因贈与も否定

1 押印が欠けた自筆証書遺言→死因贈与を肯定

無効な遺言が『死因贈与契約』として有効になることがあります。
詳しくはこちら|無効な遺言を死因贈与契約として認める・典型的種類
本記事では,肯定・否定された裁判例を紹介します。
まずは死因贈与契約が認定された事例からまとめます。

<押印が欠けた自筆証書遺言→死因贈与を肯定>

あ 事案

Aが自筆証書遺言を作成した
しかし押印が欠けていた

い 裁判所の判断

自筆証書遺言は無効である
死因贈与の申し込みとして認めた
遺言作成当時,受贈者の承諾があったと認めた
死因贈与の履行のために遺言執行者の選任をした
※水戸家裁昭和53年12月22日

2 日付が欠けた自筆証書遺言→死因贈与を肯定

<日付が欠けた自筆証書遺言→死因贈与を肯定>

あ 事案

BがAの身の回り世話・看護を献身的に行っていた
AはBに報いるために財産の一部を贈与したいと考えた
死亡の5日前に,Aは自筆証書遺言を作成した
Aの意向を自筆して署名・捺印した
AはBに,この遺言を直ちに手渡した
この書面には作成日付の記載が欠けていた

い 裁判所の判断

自筆証書遺言としての様式を欠くとしても
死因贈与の申込の意思表示として認めた
※東京地裁昭和56年8月3日

3 日付・押印が欠けた自筆証書遺言→死因贈与を肯定

<日付・押印が欠けた自筆証書遺言→死因贈与を肯定>

あ 事案

Aが自筆証書遺言を作成した
内容=一切の財産を妻に与える
Aはこれを妻に手渡した
遺言には作成日付・押印が欠けていた

い 裁判所の判断

死因贈与として認めた
※広島家裁昭和62年3月28日

4 代筆の自筆証書遺言→死因贈与を肯定

<代筆の自筆証書遺言→死因贈与を肯定>

あ 事案

Aが入院する病室において
Aが財産の承継内容を弟Bに口授した
Bが書き写した
Aが署名押印した

い 裁判所の判断

遺言書には死因贈与の意思表示の趣旨を含む
→死因贈与の意思表示を認めた
※広島高裁平成15年7月9日

5 無効な公正証書遺言→死因贈与を肯定

公正証書遺言が無効になるのはレアケースです。
詳しくはこちら|公正証書遺言の無効リスク極小化と無効事由(全体・主張の傾向)
そのようなケースにおいて死因贈与が認定されることもあります。
死因贈与が肯定された判例です。

<無効な公正証書遺言→死因贈与を肯定>

あ 事案

公正証書遺言が作成された
内容=遺贈
立会人の1人に欠格事由があった

い 裁判所の判断

公正証書遺言としては無効である
遺贈と死因贈与とは次の目的が同一である
目的=贈与者の死亡により受贈者に対する贈与の効力を発生させる
→実質的に変わりがない意思表示である
→死因贈与を認めた
『書面による』贈与として認めた
※民法550条
※東京高裁昭和60年6月26日

6 無効な自筆証書遺言→死因贈与も否定

死因贈与として認定されなかった事例もあります。
以下,死因贈与を否定した事例の判断を紹介します。

<無効な自筆証書遺言→死因贈与も否定>

あ 事案

Aが友人Bに代筆を頼んだ
『遺言書』を作成した
内容=すべての財産を孫Xに委譲する
Aは死亡直前に所有不動産をYに譲渡した

い 裁判所の判断

自筆証書遺言としては無効である
遺言には死因贈与の意思表示の趣旨が含まれない
Xの承諾もない
→死因贈与を認めなかった
※仙台高裁平成4年3月26日

7 無効な公正証書遺言→死因贈与も否定

公正証書遺言が無効となったケースです。
死因贈与の主張がありましたが,認められませんでした。

<無効な公正証書遺言→死因贈与も否定>

あ 事案

Aが公正証書遺言を作成した
内容=7女Bに土地などを遺贈する
Bは遺言の存在・内容を知らなかった
証人に欠格者が含まれていた

い 裁判所の判断

公正証書遺言としては無効である
Aは生前にBに対して死因贈与の意思表示をしていない
直接or間接のいずれの意思表示もなかった
Bが死因贈与を受諾する意思表示もなかった
→死因贈与を認めなかった
※最高裁昭和47年5月25日

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【有効な遺言を無効な遺言の死因贈与認定により撤回した事例】

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