【被代襲者の受益と代襲相続人の特別受益該当性】
1 被代襲者の受益の特別受益性の背景と具体例
2 被代襲者の受益の特別受益性の判断(一般)
3 被代襲者の受益の特別受益性の判断(折衷説)
1 被代襲者の受益の特別受益性の背景と具体例
代襲相続のケースで『被代襲者』に特別受益が認められることもあります。この場合,通常どおりに特別受益として扱ってよいかという解釈論があります。
多少複雑なので,解釈論の前に,背景となる問題点と具体例をまとめておきます。
<被代襲者の受益の特別受益性の背景と具体例>
あ 問題の所在
被代襲者が特別受益となる贈与を受けた
代襲相続人の相続分の算定について
→特別受益として扱うべきかどうか
い 事案の具体例
被相続人Aが長男Bに生前贈与をした
これが特別受益に該当する
Bが死亡した後にAが死亡した
Bには子Cがいる
Aの相続に関してCは代襲相続人となる
Bを『被代襲者』と呼ぶ
詳しくはこちら|代襲相続|孫・甥・姪が相続する・『相続させる』遺言・民法改正による変化
2 被代襲者の受益の特別受益性の判断(一般)
被代襲者の受益を代襲相続人の特別受益として扱うかどうかの判断基準をまとめます。まずは一般的な見解です。
<被代襲者の受益の特別受益性の判断(一般)>
あ 一般論
一般論としては,特別受益を考慮する
い 贈与の性格による判断
特別の高等教育を受けたという特別受益について
→受益者の人格とともに消滅する
→一身専属的性格のものである
→代襲相続人は受益の持戻義務を負わない
=特別受益として扱わない
※鹿児島家裁昭和44年6月25日
3 被代襲者の受益の特別受益性の判断(折衷説)
被代襲者の受益の特別受益として扱う判断基準は前記以外にもあります。折衷説的な見解を紹介します。
実質的には前記の見解と同様であるとも言えましょう。
<被代襲者の受益の特別受益性の判断(折衷説)>
被代襲者への贈与によって
代襲相続人が現実に経済的利益を受けている場合
→受けた利益の限度で特別受益に該当する
折衷説的な見解である
※徳島家裁昭和52年3月14日
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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