【賃貸借におけるオーナーの行方不明|供託・失踪宣告・不在者財産管理人】
1 賃貸借のオーナーの不在→賃料供託が望ましい
2 賃貸借のオーナー不在の長期化→『賃借人』は失踪宣告申立ができない
3 賃借人はオーナーの『不在者財産管理人』の選任申立をできる
1 賃貸借のオーナーの不在→賃料供託が望ましい
建物の賃貸借の途中で『オーナーと連絡がつかない→賃料は払えない』というケースがあります。
賃料支払を『集金方式』にしていた場合などです。
ここで,賃料を払わないままにしておくとリスクがあります。
後から『賃料不払いによる賃貸借契約解除』を主張される可能性があるのです。
経緯はともかく,形式的に『債務不履行』に該当するのです。
このような時のために『供託』という制度があります(民法494条)。
法務局の供託の部署に賃料相当額を『預ける』ことによって,法律上『弁済したのと同じ状態』とみなされるのです。
詳しくはこちら|供託|基本|趣旨・制度概要・5つの種類・利用する具体的状況
2 賃貸借のオーナー不在の長期化→『賃借人』は失踪宣告申立ができない
オーナーと連絡が付かないと『修繕の要求をできない』という困った状態が生じます。
この点,行方不明の期間が7年以上という場合は『失踪宣告』の対象となります。
『失踪宣告』がなされれば,オーナーの立場は『相続人』に承継されます。
そうすれば,賃借人から『オーナーの相続人』に対して修繕の要求などをできるようになります。
しかし『賃貸人』は失踪宣告の申立をすることができません。
詳しくはこちら|生死不明→不在者財産管理人→失踪宣告→相続,生命保険金支払となる;普通失踪,危難失踪
オーナーの親族に頼んで,親族から『失踪宣告の申立』をしてもらう,ということであれば可能です。
3 賃借人はオーナーの『不在者財産管理人』の選任申立をできる
オーナーが長期間行方不明,という場合は『不在者財産管理人』の制度を利用できます(民法25条)。
不在者財産管理人の選任申立の場面では,賃借人も利害関係人に該当すると考えられます。
『死亡の有無による影響』はないけれど『建物管理人の有無については利害が直撃する』ということが理由です。
不在者財産管理人が選任されれば,不在者財産管理人が建物の管理行為を行うことになります。
例えば,必要な建物修繕については,メンテナンス業者に発注するなどの具体的行為を行えるのです。
条文
[民法]
(供託)
第四百九十四条 債権者が弁済の受領を拒み,又はこれを受領することができないときは,弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は,債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも,同様とする。
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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