【相続財産の管理(相続人による管理と家裁による保存に必要な処分)】
1 一般的な相続財産の管理
相続財産の管理に関する規定は、民法上いくつかあります。
その中で最も一般的な規定は、相続人が相続を承認するか放棄するかを決めていない間の管理義務です。
いわゆる熟慮期間のことです。
詳しくはこちら|相続承認と相続放棄|承認には単純承認と限定承認がある|熟慮期間・伸長の手続
本記事では、熟慮期間における相続人の財産管理義務(責任)について説明します。
2 一般的な相続財産の管理の条文規定
まず、一般的な相続財産の管理について規定する条文をまとめます。
一般的な相続財産の管理の条文規定
あ 相続人による管理
相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって
相続財産を管理しなければならない
ただし、相続の承認or放棄をしたときは、この限りでない(※2)
※民法918条1項
い 家裁による保存に必要な処分
家庭裁判所は、利害関係人or検察官の請求によって
いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる
※民法918条2項
別表第1事件として分類されている
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
3 家裁による『保存に必要な処分』
家庭裁判所は、相続財産の保存に必要な処分を命じることがあります(前記)。
相続人も、『保存に必要な処分』の命令をするよう、家裁に請求することができます。
そして、『保存に必要な処分』の内容にはいろいろなものがあります。
家裁による『保存に必要な処分』
あ 相続人による請求
『利害関係人』には相続人自身を含む
→相続人自身も家裁に保存に必要な処分を請求できる
い 『保存に必要な処分』の内容
ア 財産の封印イ 換価その他の処分禁止ウ 占有移転禁止エ 財産目録の調整と提出の命令オ 相続財産清算人の選任(後記※1) ※谷口知平ほか編『新版 注釈民法(27)相続(2)補訂版』有斐閣2013年p487
4 相続放棄の後にも管理義務が継続する(概要)
前記の管理義務は、熟慮期間中のものでした。
相続放棄をした後は、この管理義務は終了します(前記※2)。
しかし、相続放棄の後に、次に管理する者が実際に管理し始めるまでの間は管理義務が継続します。
詳しくはこちら|相続放棄をした者も相続財産の管理義務を負う(管理継続)
5 相続財産清算人の選任(概要)
熟慮期間において、相続財産の管理の一環として家庭裁判所が相続財産清算人(令和3年改正前の相続財産管理人)を選任することがあります(※1)。
これとは別に、相続人が存在しない場合に相続財産清算人を選任することもできます。
詳しくはこちら|相続債権者による相続財産清算人の選任手続と換価・配当の流れ
一般的な相続財産の管理としての相続財産清算人(前記※1)も、相続人不存在における相続財産清算人と同じ扱いです。
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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