【複数の受益者の意思決定(原則は全員一致・特段の定めによる多数決など)】
1 複数の受益者の意思決定(原則と特段の定めの具体例)
2 複数受益者の意思決定の規定(信託法105条)の趣旨
3 複数の受益者による意思決定の方法(規定内容)
4 複数受益者の意思決定方法の定めの具体例
1 複数の受益者の意思決定(原則と特段の定めの具体例)
信託において受益者が複数人存在するということもあります。
そして,複数の受益者が意思決定をする方法について信託法で定められています。
本記事では,複数の受益者の意思決定の方法について説明します。
2 複数受益者の意思決定の規定(信託法105条)の趣旨
信託法105条に,複数の受益者の意思決定の方法が規定されています。
これは,実際に受益者が複数人いるというケースが多いために作られた規定です。
<複数受益者の意思決定の規定(信託法105条)の趣旨>
実務においては,1個の信託行為により複数の者が受益者として指定されることも多い
そこで信託法は,複数の受益者の意思決定方法に関して規定を設けた
※道垣内弘人編著『条解 信託法』弘文堂2017年p523,524
3 複数の受益者による意思決定の方法(規定内容)
複数の受益者による意思決定の方法の原則は,すべての受益者の意見が一致するというものです。
これだと受益者のうち1人でも反対すると意思決定(可決)ができません。そこで,信託契約の中で緩和することもよくあります。
なお,このような意思決定が必要なのは受益者全体として意思決定をする場合だけです。もともと個々の受益者が行使できる権利はまったく別です。
<複数の受益者による意思決定の方法(規定内容)>
あ 原則
複数の受益者によって決定する事項について
→原則として,すべての受益者の一致によって決定する
※信託法105条1項本文
い 別段の定め
信託行為に別段の定めを置くことができる(後記※1)
※信託法105条1項ただし書
う 単独受益者権(参考)
単独受益者権の行使は各受益者が単独で行使できる
※信託法92条
4 複数受益者の意思決定方法の定めの具体例
信託契約の中で,受益者の意思決定の方法を定めておくこともよくあります(前記)。
そのような規定にはいろいろな種類のものがあります。
具体例として,受益者集会を開催して議決する規定や,通知をした後に一定期間反対する者がいなければ可決したものとする規定があります。
また,一定の事項については第三者に判断を委ねるということもできます。
<複数受益者の意思決定方法の定めの具体例(※1)>
あ 受益者集会
受益者集会の決議による
※信託法105条2項
い みなし賛成
決定内容の候補を各受益者に対して通知する
一定期間の経過後に反対する受益者がいなければ決定される
う 第三者への委任
第三者に意思決定を委任する
※信託法149条4項,151条3項,155条3項,159条3項など
※道垣内弘人編著『条解 信託法』弘文堂2017年p524
本記事では,複数の受益者の意思決定の方法について説明しました。
実際に,複数の受益者の間で対立が生じて意思決定が困難となるケースもあります。
実際に複数の受益者が存在する信託の利用をお考えの方や,既に作成した信託に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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