【葬式費用の先取特権(民法309条)(解釈整理ノート)】
1 葬式費用の先取特権(民法309条)(解釈整理ノート)
民法309条は、葬式費用の先取特権を定めています。実務では、葬式費用(葬儀費用)を誰が負担するのか(後記)が問題となることが多く、それとも関係します。
本記事では、民法309条に関するいろいろな解釈を整理しました。
2 民法309条の条文
民法309条の条文
第三百九条 葬式の費用の先取特権は、債務者のためにされた葬式の費用のうち相当な額について存在する。
2 前項の先取特権は、債務者がその扶養すべき親族のためにした葬式の費用のうち相当な額についても存在する。
※民法309条
3 民法309条の趣旨
民法309条の趣旨
葬儀社や遺族等が葬式費用の回収を心配せず、安心して葬式を執り行えるように認められた制度である
4 被担保債権
(1)先取特権の被担保債権→相応の葬式費用
先取特権の被担保債権→相応の葬式費用
あ 被担保債権の範囲
死者(債務者自身)および債務者の扶養すべき親族のためになされた相応の葬式・埋葬に直接必要な費用に限定される
い 相当な葬式費用の判断基準
死者の社会的地位、財産状態、地方慣習等を考慮して判断される(葬式を執り行う者の地位等を基準とするものではない)
(2)「葬式費用」の具体的内容
<「葬式費用」の具体的内容>
あ 「葬式費用」に含まれるもの
(ア)棺柩その他葬具(イ)葬式場設営費用(ウ)読経費用(エ)火葬の費用(オ)人夫の給料(カ)墓地の代価(相当な額に限る)(キ)墓標の費用
い 「葬式費用」に含まれないもの
(ア)法事費用(イ)石碑建立等の費用(葬式に直接必要な費用とはいえないもの)(ウ)貸与した金銭がたまたま葬式費用に支出された場合の貸金債権(エ)葬儀社に雇われた者(人夫・運転手等)の報酬債権 〜〜〜
5 当事者
(1)先取特権者となる者→代わりに費用を支出した者
先取特権者となる者→代わりに費用を支出した者
あ 先取特権者となる者
ア 基本
債権者が債務者のために直接葬式費用を支出した者が先取特権者となる
イ 先取特権者となる者の例(ア)葬儀社(イ)葬儀社に葬式費用の立替払をした者
い 先取特権者とならない者
自ら喪主として葬儀社と葬儀に関する契約をした者(自己の債務として支払った者)
※東京高決平成21年10月20日金法1896号88頁
※東京地判昭和61年1月28日判タ623号148頁(整合的)(喪主が葬式費用を負担という判断)
※東京地判昭和59年7月12日判タ542号243頁(整合的)(相続人全員が相続放棄した場合には葬式費用につき相続財産から支払うという例外的判断)
(2)「債務者」→死者自身(1項)・扶養義務者(2項)
「債務者」→死者自身(1項)・扶養義務者(2項)
あ 民法309条1項の「債務者」
債務者が死亡した場合の死者自身を意味し、先取特権は死者の遺産の上に成立する
い 民法309条2項の「債務者」
葬式を執り行った扶養義務者をさし、その扶養義務者の総財産の上に先取特権が成立する
(3)「扶養すべき親族」(2項)の範囲
「扶養すべき親族」(2項)の範囲
6 先取特権の順位
先取特権の順位
※民法329条1項・306条
7 葬儀・埋葬費用に関する特別法上の先取特権(参考)
葬儀・埋葬費用に関する特別法上の先取特権(参考)
あ 生活保護法76条2項
生活保護を受けていた者の葬祭を行った場合、都道府県・市町村が遺留物品の上に他の債権者の先取特権に対して優先権を有する
い 老人福祉法27条2項
養護老人ホーム等入所者の葬祭を市町村が行った場合、遺留物品の上に他の債権者の先取特権に対して優先権を有する
う 行旅病人及行旅死亡人取扱法13条2項
行旅死亡人の埋葬等を市町村が行った場合、遺留物件の上に他の債権者の先取特権に対し優先権を有する
8 関連テーマ
(1)先取特権の基本
詳しくはこちら|先取特権|種類・優先順位・実行=競売申立方法・活用例
(2)葬儀費用は誰が負担するのか
詳しくはこちら|葬儀費用は誰が負担するのか(喪主・相続人・相続財産・慣習説)
9 参考情報
参考情報
本記事では、葬式費用の先取特権について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に葬式、葬儀の費用に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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