【遺産分割調停の段階的進行モデル(詳細整理ノート)】

1 遺産分割調停の段階的進行モデル(詳細整理ノート)

家庭裁判所の遺産分割調停では、段階的に協議を進める方法がとられています。この調停の運用方法(方針)は一種のルールといえます。本記事では、この運用方法についての細かい内容を整理しました。
なお、段階的進行モデルを用いた実際の遺産分割調停の流れは、別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|遺産分割調停の段階的進行モデル(家裁の遺産分割の流れ)

2 段階的進行モデルの目的と意義

段階的進行モデルの目的と意義

あ 目的→適正・迅速

遺産分割調停においては、適正かつ迅速な解決を図るために、以下の順序で審理を進め、各段階での当事者の主張を整理し、対立点の調整と合理的な合意形成を目指している

い 段階に分ける意義

段階的進行モデルは、遺産分割事件の紛争性の高さや当事者間の感情的対立を考慮したものである
遺産の範囲とその評価が確定する前に特別受益・寄与分の主張が先行すると、感情的対立が深まるため、合意を積み重ねる段階的進行が重要となる

3 遺産分割調停の進行の5段階

遺産分割調停の進行の5段階

(ア)相続人の範囲(イ)遺産の範囲(ウ)遺産の評価(エ)各相続人の取得額(特別受益・寄与分)(オ)遺産の分割方法

4 運用上の柔軟性

運用上の柔軟性

このモデルは期日における主要な協議事項の順番や達成目標を示すものであり、硬直的な運用を意味するものではない
調停初期段階で(後半段階の)遺産の分割方法や特別受益・寄与分に関する当事者の基本的な考えを把握することは、進行の方向性検討に有益である

5 内部評議の時期(標準的な進行テンポ)

内部評議の時期(標準的な進行テンポ)

あ 内部評議の実施

調停委員会は的確な調停運営のため、裁判官と調停委員との間で評議を密に行う
段階的進行モデルを基本としながら、節目となる期日を設け、その際に必ず対面の評議を実施している

い 節目となる期日

ア 第1回期日 事前評議を必ず実施し、事案の概要確認と進行方針の検討を行う
イ 第3回期日 遺産の範囲を確定することを目標とし、事後または第4回期日の事前に評議を実施
ウ 第7回期日 係属後1年前後に入り、特別受益・寄与分および遺産の分割方法についても検討される段階で、終局に向けた道筋の検討を行う

6 各段階における合意の調書化

各段階における合意の調書化

あ 中間合意の記録

当事者が遺産の範囲、遺産の評価等について合意した際には、その内容を期日調書に記載する
これにより紛争の蒸し返しを防止する効果がある

い 調書化の効果

(ア)紛争の蒸し返し防止(イ)手続代理人による当事者へのはたらきかけへの活用(ウ)調停委員会による説得力あるはたらきかけの実現(エ)当事者による話合いの進捗の認識と紛争解決意欲の向上

7 当事者への説明→チャート図の活用

当事者への説明→チャート図の活用

あ チャート図の活用

段階的進行モデルを図式化したチャート図を第1回期日までに当事者に交付し、各調停室に備え置いている

い チャート図の機能

(ア)遺産分割調停の進め方の全体像の提示(イ)遺産分割の法的枠組みの図示(ウ)調停の各段階における現在位置の確認(エ)説明内容の客観性・公平性の担保

8 参考情報

参考情報

小田正二ほか稿『東京家庭裁判所家事第5部における遺産分割事件の運用』/『判例タイムズ1418号』2016年1月p10、11

本記事では、遺産分割調停の段階的進行モデルについて説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
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