【遺産分割調停における遺産評価の手続(整理ノート)】
1 遺産分割調停における遺産評価の手続(整理ノート)
遺産分割の手続の中でも、対立が激しくなる事項の1つが、遺産の評価です。本記事では、遺産分割において、遺産の評価はどのように行うのか(どのような手続で進めるのか)、ということについて整理しました。
2 遺産評価の段階→遺産の範囲確定の次
遺産評価の段階→遺産の範囲確定の次
遺産の範囲が確定した後、遺産の評価確定作業に移行する
当事者に対して評価検討に必要な資料の提出を求め、それらを参考にしながら評価に関する当事者の意見を調整する
遺産分割調停における段階的進行モデルについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|遺産分割調停の段階的進行モデル(家裁の遺産分割の流れ)
3 不動産の評価方法
(1)合意による不動産の評価
合意による不動産の評価
不動産業者の査定を用いる場合は、当事者から複数の査定書の提出を求め、極端な評価額の開きがないときには平均値を基準にして合意がされることが多い
(2)不動産鑑定による評価
不動産鑑定による評価
あ 流れ
不動産の評価について合意がされない場合には、以下の流れで不動産鑑定を実施する
(ア)鑑定実施についての当事者間の合意(イ)当事者からの鑑定の申出(ウ)鑑定人候補者による費用見積もりの提示(エ)当事者の費用予納(オ)鑑定採用決定
い 鑑定費用の扱い
鑑定費用は双方合意の上で法定相続分に応じて予納されることが多い
費用見積額によっては、費用対効果の観点から当事者が鑑定をやめて評価の合意をすることもある
不動産鑑定の費用の目安については、別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|不動産の鑑定費用の相場(土地・建物の評価、地代・家賃の評価)
(3)不動産鑑定を実施する上での注意点
不動産鑑定を実施する上での注意点
あらかじめ鑑定の結果に従う又は尊重するという当事者の合意を得ておくのが通常であり、その内容を期日調書に記載する
4 特別受益・寄与分がある場合の評価→2時点の評価が必要
特別受益・寄与分がある場合の評価→2時点の評価が必要
ただし、相続開始時と分割時に期間の経過がさほどなく、当事者も1時点で相続分を計算する旨合意している場合は、分割時の1時点の評価で鑑定を実施することも多い
5 不動産以外の遺産の評価
(1)預貯金
預貯金
(2)上場株式
上場株式
(3)非上場株式
非上場株式
また、相続開始後に当該法人の経営に携わっている当事者が決算報告書等の提出を拒絶することもあるなど、困難な点が少なくない
6 分割方法の選択による評価の必要性判断
分割方法の選択による評価の必要性判断
遺産不動産について現物取得の希望があるときには評価確定が必要だが、現物取得希望がない場合は任意売却による換価で代金を分割するか、共有分割を希望するのであれば評価確定せずに分割方法の合意を成立させればよい
7 特別受益・寄与分があるケース→総額算出が先行・総合調整もあり
特別受益・寄与分があるケース→総額算出が先行・総合調整もあり
ただし実際には、これらを確定せずに当事者の主張を踏まえた柔軟な解決を目指し、最終合意に向けた総合的な調整を行い調停が成立することも少なくない
8 参考情報
参考情報
本記事では、遺産分割手続における遺産評価の手続について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に遺産分割など、相続に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
相続や離婚でもめる原因となる隠し財産の調査手法を紹介。調査する財産と入手経路を一覧表にまとめ、網羅解説。「ここに財産があるはず」という閃き、調査嘱託採用までのハードルの乗り越え方は、経験豊富な講師だから話せるノウハウです。