【遺産分割における評価の基準時(遺産・特別受益・寄与分・死後認知の価額請求)(解釈整理ノート)】

1 遺産分割における評価の基準時(遺産・特別受益・寄与分・死後認知の価額請求)(解釈整理ノート)

遺産分割ではさまざまな遺産(財産)の評価(額)が問題となります。評価額を算定する中で、いつの時点の価値を使うか、つまり基準時が問題となります。本記事では、実務における評価の基準時について整理しました。

2 評価と分割方法→現物分割・代償分割では評価が必要

評価と分割方法→現物分割・代償分割では評価が必要

あ 評価が必要となる分割方法

現物分割(遺産を現物で分割する)及び代償分割(特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人に対し代償金を支払う)の場合には、他の遺産の取得や代償金の存否及び代償金額等との判断資料として、評価が必要となる

い 評価が不要となる分割方法

換価分割及び共有分割の場合には、原則として評価は不要である

3 遺産の評価の基準時(基本)→遺産分割時

遺産の評価の基準時(基本)→遺産分割時

あ 基準時→遺産分割時

遺産分割における遺産評価の基準時は、特別受益も寄与分もない場合、遺産分割時である(相続開始時ではない)
※札幌高決昭和39年11月21日判タ181号204頁、家月17巻2号38頁

い 分割時の正確な意味

分割時とは、理論的には調停成立日又は審判確定日であるが、それにできるだけ近接した日(社会通念上許容できる範囲で)の評価で足りる

4 特別受益・寄与分(修正要素)の評価の基準時

(1)特別受益・寄与分の評価→相続開始時

特別受益・寄与分の評価→相続開始時

相続分の修正要素である特別受益又は寄与分の評価(具体的相続分の算定)の基準時は相続開始時である
※広島高決平成5年6月8日判タ828号258頁

(2)遺産分割における評価→原則として2時点評価が必要

遺産分割における評価→原則として2時点評価が必要

あ 原則

特別受益又は寄与分の主張があるケースにおいて
遺産分割の基準時は分割時とするから、分割時の遺産の評価も必要となる(2時点での評価が必要となる)

い 例外=1時点評価

次の場合は1時点評価で足りる
(ア)相続開始時から遺産分割時までに時間が経過しておらず、遺産の価額に変動があまりない場合(イ)当事者全員が1時点評価を基礎とすることで合意している場合(その合意が不相当でない限り)

5 死後認知の価額請求ケースの基準時→請求時

死後認知の価額請求ケースの基準時→請求時

相続の開始後、認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は、価額の支払を請求した時である
※最二小判平成28年2月26日(家判7号31頁)

6 関連テーマ

(1)遺産分割調停における遺産評価の手続

詳しくはこちら|遺産分割調停における遺産評価の手続(整理ノート)

(2)遺産分割調停の段階的進行モデル(家裁の遺産分割の流れ)

詳しくはこちら|遺産分割調停の段階的進行モデル(家裁の遺産分割の流れ)

(3)寄与分の手続

詳しくはこちら|寄与分の手続|協議・家事調停・審判|遺産分割との併合・申立が遅い→却下

(4)特別受益に関する裁判手続(遺産分割手続と確認訴訟)と法的性質論

詳しくはこちら|特別受益に関する裁判手続(遺産分割手続と確認訴訟)と法的性質論

7 参考情報

参考情報

片岡武ほか編著『家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務 第3版』日本加除出版2017年p215、216
岡口基一著『要件事実マニュアル5 第5版』ぎょうせい2017年p448

本記事では、遺産分割における評価の基準時について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に遺産分割など、相続に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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