【税務上の連帯納付責任の基本(相続税・贈与税・固定資産税)】
1 税務上の連帯納付責任の基本(相続税・贈与税・固定資産税)
2 税務上の連帯納付責任の種類
3 連帯納付責任による納付後の求償
4 共有者の固定資産税の連帯納付による持分買取権(参考)
5 税務上の連帯納付責任と民法上の連帯債務・保証債務の規定の関係
6 連帯納付責任による求償の保全
7 和解における連帯納付責任への配慮(参考)
1 税務上の連帯納付責任の基本(相続税・贈与税・固定資産税)
税金については,一定の関係者同士で連帯納付責任を負うことがあります。本記事では,いろいろな場面での税金の連帯納付責任について説明します。
2 税務上の連帯納付責任の種類
税金の連帯納付責任は法律上規定されていて,当事者の合意・納得の有無は関係ありません。
最初に税務上の連帯納付責任の種類をまとめます。
<税務上の連帯納付責任の種類>
種類 | 連帯納付となる者 | 根拠 |
相続税 | 複数の相続人 | 相続税法34条1項 |
贈与税 | 受贈者・贈与者 | 相続税法34条4項 |
共有物の固定資産税 | 共有者間 | 国税通則法9条,地方税法10条の2 |
3 連帯納付責任による納付後の求償
連帯納付責任により,他の者が本来納付すべき税金を納付した場合は,本来納付すべき者(納付義務者)に対して求償することができます。簡単に言うと,立て替えた分を返してもらうということです。
4 共有者の固定資産税の連帯納付による持分買取権(参考)
共有物の固定資産税は,共有者全員に連帯納付責任があります(前記)。実際には共有者の1人が全額を納付し,他の共有者に求償することがよく行われています。
他の共有者が求償に応じない場合は,他の共有者の共有持分を強制的に買い取ることができる場合もあります。
詳しくはこちら|共有持分買取権の基本(流れ・実務的な通知方法)
5 税務上の連帯納付責任と民法上の連帯債務・保証債務の規定の関係
民法上,連帯債務や保証債務(保証人)に関する規定があります。たとえば事前求償権という制度です。
しかし,税金の連帯納付責任については,民法上の連帯債務や保証債務の規定が適用されません。
<税務上の連帯納付責任と民法上の連帯債務・保証債務の規定の関係>
民法上の規定 | 事前求償権 | 税務への準用 |
連帯債務の規定 | なし | あり(後記※1) |
保証債務(保証人)の規定 | あり(後記※2) | なし(後記※1) |
(※1)国税通則法8条
(※2)民法460条
6 連帯納付責任による求償の保全
税務上の連帯納付責任によって(他の納付義務者の税金を代わりに)納付した後には,納付義務者に求償できます(前記)。しかし,納付する前に求償すること(事前求償権)はできません(前述)。
連帯納付をさせられる側として,可能な対策としては,担保の設定を受ける方法がありますが,他の納付義務者が任意に応じる場合にしかできません。
事情によっては,仮差押をすることができることもあります。
<連帯納付責任による求償の保全>
あ 当事者間で任意に担保を設定する
抵当権や保証人の提供を受けることなど
い 仮差押
被保全債権が履行期到来前の場合でも
→個別事情によっては認められる
詳しくはこちら|民事保全(仮差押・仮処分)の基本|種類と要件|保全の必要性
7 和解における連帯納付責任への配慮(参考)
ところで,いろいろなトラブルに関して,和解が成立して解決した後で,税務上の連帯納付責任によって想定外の問題が起きてしまうということがあります。結局,せっかくトラブルが解決したのに解決しきれていなかったということになります。そこで,和解の中で,税務上の連帯納付責任によるトラブルを排除するよう,工夫することが求められます。
詳しくはこちら|債権回収不能や債務免除→みなし贈与・貸倒処理・連帯納付義務
本記事では税務上の連帯納付責任について説明しました。
実際には,個別的事情によって法的扱いや最適な対応は違ってきます。
実際に税金が関係するトラブルに直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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