【遺言の訂正(変更・撤回)の基本(全体・ニーズ)】

1 遺言の変更・撤回の背景・ニーズの例
2 遺言の書き換え・変更は自由にできる
3 遺言の変更・撤回の方法の種類(概要)
4 遺言の書き換えと遺言の種類
5 撤回の撤回による復活の有無(概要)
6 遺言の書き換えの際の注意点(概要)

1 遺言の変更・撤回の背景・ニーズの例

遺言を作成した後に変更や撤回をしたいという状況はよくあります。まずは,典型的な状況をまとめます。

<遺言の変更・撤回の背景・ニーズの例>

あ 財産が変わった

ア 財産内容が変化した 不動産・株式の購入や売却を行った
金融資産の組み換えを行った
例;満期となった定期預金を解約して国債を購入した
いわゆる『ポートフォリオ』の変動である
イ 評価額が変化した 不動産・株式の価値が大きく上がっている

い 気持ちが変わった

人間関係に変化が生じた

2 遺言の書き換え・変更は自由にできる

遺言は単独で作るという特徴があります。契約のように複数の当事者が合意するというプロセスがないのです。つまり『当事者を法的に拘束する』という機能がないのです。

<遺言の書き換え・変更は自由にできる>

遺言を作成した後において
遺言者は遺言の変更・撤回を自由にすることができる
理由・誰かの承諾などは一切不要である
※民法1022条

3 遺言の変更・撤回の方法の種類(概要)

遺言を作った後に変更や撤回する方法はいくつかのものがあります。概要をまとめます。

<遺言の変更・撤回の方法の種類(概要)>

あ 遺言の撤回の方法

遺言の撤回について
具体的な方法はいくつかある
ア 遺言により撤回する方法 一般的に『遺言の書き換え』と呼ぶ
イ 遺言以外の行為により撤回する方法 例;遺言書を破棄すると撤回とみなされる
詳しくはこちら|遺言の撤回の種類(基本的解釈・具体例)

い 遺言の変更の方法

遺言の書面を変更(訂正)することができる
方式が厳格に決まっている
詳しくはこちら|遺言の変更(訂正)の『方式』と方式違反の効力

4 遺言の書き換えと遺言の種類

遺言の『書き換え』をする場合,新たな遺言の『方式・種類』は限定されていません。
簡単に言えば,複数の遺言のうち『新しい日付』が優先なのです。公正証書が自筆証書よりも優先,というようなルールはありません。

<遺言の書き換えと遺言の種類>

あ 基本的事項

前の遺言を新たな遺言で撤回する場合
→遺言の『種類』については制限・規定はない

い 公正証書遺言による書き換え

公正証書遺言は記録として理想的である
→書き換えを行う遺言の方法として望ましい

う 自筆証書遺言による書き換え

自筆証書遺言は記録としては公正証書に劣る
→トラブルの要因となることがある
例;偽造が主張される
遺言者の死後,『検認』の手続が必要となる
詳しくはこちら|遺言の検認|検認義務・手続の流れ・遺言作成時の注意

遺言の種類についての全般的事項は,別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|遺言の方式・種類|自筆証書・公正証書・秘密証書遺言|証人欠格

5 撤回の撤回による復活の有無(概要)

遺言の撤回が,さらに撤回されるという状況になることがあります。
この場合,元の遺言が復活する場合としない場合があります。
扱いはちょっと複雑です。
『撤回の撤回』に関する規定・解釈について別記事で説明しています。
詳しくはこちら|『撤回の撤回・撤回が効力を生じない』の具体例と解釈(全体)

6 遺言の書き換えの際の注意点(概要)

遺言の書き換えにより,複数の遺言が存在する状態になります。遺言者の死後,有効性に関するトラブルが生じることが多いです。
そこで,遺言の書き換えを行う際には,紛争発生リスクを極力回避しておくことが臨まれます。これについては別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|遺言作成時の注意(タイミング・変更理由の記載・過去の遺言破棄)

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